愛未は元々、完璧主義だった。 中学の頃は、成績優秀、友達も多く顔も“カワイイ”と呼ばれる部類に入っていた。 愛未を校内で見かけた男子は「カワイイよなぁ」と愛未を囃したて、何十人もの男に告白された。 けれど愛未は興味がなく、学校一男前と言われていた男子からの告白さえも断った。 付き合えば告白はされなくなる。告白される、と言うのが楽しくてならなかった。 ―――だが、それは中学を卒業した途端変わってしまった。 高校へ入れば告白もされず、カワイイとも言われず、成績も落ちていた。 友達がたくさん居たのが愛未の唯一の救いだったが、完璧主義の愛未が満足できるはずなどなかった。 自分よりカワイイ子が居ることが、愛未には許せなかった。 それが原因で自分は告白されないのだと、カワイイと言われなくなったのだと、思い込んでいた。 『アンタ最近調子乗ってるよね?』 髪を茶色く染め、スカートを短くして不良を気取った。 そしてカッターを握り締め、“カワイイ”と呼ばれる少女を片っ端から脅して行った。 『調子なんか・・乗ってないです...』 『嘘つくなよ!カワイイって言われていい気になってんだろ?』 『そんなっ・・!いい気になんてなってないですっ・・・!!』 『じゃあその茶髪、黒髪に戻して来い。化粧もすんな。目立つな。わかったな?』 脅された少女は、大概愛未の言うとおりにした。 黙って頷き、次の日には愛未の要求通りの女子になった。 従わない子も居たが、愛未はもう一度脅し、顔も少し切り付けた。 それで、愛未の思い通りに周りは変わっていった。 もう誰も、愛未に逆らおうなんてしない。 愛未が1年かかって、ある種の独裁を完全に築き上げた矢先だった。 初めて恋した拓弥に、フラれてしまった。 「悔しい・・・なんで・・なんであたしがフラれるのよ・・・・っ」 愛未は崩れ落ち、地面に這い蹲(つくば)る格好になる。 そして涙を流し地面を引っかくと、僅かな土を掴み取り、力いっぱいバラ撒いた。 BACK * NEXT |